粘剤と水のこと

トロロアオイ

粘剤

和紙を漉く時には「トロロアオイ」という植物の根っこを潰して出てくるネリ(粘剤)を水に混ぜます。
トロロアオイの根には、水に非常に溶けやすいガラクチュロン酸という多糖類をたくさん含まれていて、コウゾが水の中ですぐに沈まないように、まんべんなく浮遊する状態をつくる役目をはたします。

トロロアオイの根
トロロアオイの根っこ

けれど、トロロアオイを栽培する生産者はコウゾ同様に減り続けていて、2019年6月9日の朝日新聞デジタルの記事によると、全国生産の7、8割を占めている茨城県の農家5戸が高齢化と収入面で割に合わないとの理由から作付けをやめる方針を決めたそうです。

トロロアオイの畑
トロロアオイの畑(手すき和紙工房潮紙)

また、トロロアオイは天然粘剤ですから環境に敏感で傷みやすいため、保存・管理をどうするか、という問題もあります。
保存料を使うという方法もありますが、自然のままで使うには冷凍保存となります。
一方、化学粘剤は比較的、保存・管理が簡単です。

トロロアオイの葉っぱ
9月頃のトロロアオイの葉っぱ。トロロアオイは1年草で5月頃種をまきます。
トロロアオイの花
トロロアオイは9月頃に花が咲きます。花はオクラの花に似ていて、ハナオクラとも呼ばれ、関西では天ぷらなどで食用としても使われます。
トロロアオイの花のあと
トロロアオイを手すき和紙に使う際は、根を太らせるために花を切ります。

やわらかい水

和紙づくりに欠かせないのが水です。
流し漉きをする時だけではなく、原料を煮たり、洗ったり…あらゆる工程で水を使います。
和紙の産地は水資源が豊かな場合が多いのはそのためです。
和紙づくりで使う水は、綺麗であることも重要ですが、軟水で1年を通して温度があまり高くならない水が適しています。

1200年以上残る和紙

正倉院に残っている和紙と同じような原料を使い、同じような工程で和紙づくりをしたら、1200年以上残る和紙が出来るかもしれない!…そう思うと、減少し続ける伝統的な和紙の原料や道具、技術継承者のことが気になりますし、時代の流れによって自然淘汰される産業と割り切るのはあまりにももったいないと思うのです。
私たちが暮らしの中で楽しみながら関われることを一緒に見つけませんか?

トロロアオイ

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